団結!義務!宿命!


by maxhorn
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カテゴリ:旧ストーリー( 12 )

第10話

 暗黒大陸に近づくてその全貌が明らかになった。漆黒の断崖が巨大な壁になっていて、船じゃ容易に辿り着けなかっただろう。周りは黒い霧に囲まれ、上空数千メートルにいても若干霧が出ている。べレン達は上空で一時停止していた。
 「準備はいいか?」
べレンがトーア達に聞く。
 「細心の注意を払わなくては。何が待ち受けているのか、先は真っ暗だからな。」
ロックが言う。
 「ほんま文字通りやで。」
ギアがニコッとしながら返す。
 「俺とギアについてこい!ソーラは左、ハイナは右、コワックとロックは後方を見張りながらだ!いくぞ!」
べレンがギアを抱えながら先陣を切って霧の中に降下していく。4人もそれに続いた。



 暗黒大陸
 この言葉を知らない者はいない。

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この惑星バイオニーの南半球に位置し、暗黒海を隔てて存在する大陸。大陸全域に暗黒病ウイルスと呼ばれる死の病原菌が蔓延しており、その感染力たるや、平均寿命2000歳の巨大なラヒ、ウォーキングウッドでさえも即座に空気感染するという。感染した生き物はきっかり7日で死に至る。治す方法はひとつ、大陸に生息している暗黒草を用いた薬を飲む事。もしくは暗黒大陸に生息するラヒ等の生物の身体構造を研究する事で、何か他に手段を得る事ができるかもしれない。

 また暗黒病による被害は、初代世界トーアの時代の大流行が最後とされているが、その伝説は後世に語り継がれており、暗黒海及び暗黒大陸に近づく者はいない。もしいたとしても、生きて帰る事はないのだ。



 心なしか、べレンは息苦しさを覚えた。おそらく・・・もう既に感染しているのかも。そう思い、皆に尋ねる。
 「どうだみんな、何か変わったこととか、体に異変は?」
 「息苦しいわ。」
ハイナが答える。どうやらみんなそうらしい。
 「どこか着地点を見つけようぜ。」
ソーラが言う。
 「あぁ、今探してる。」
辺りは暗黒海の夜ほど暗くはないが、黒い霧が出ているうえに木々や地面まで黒いときた。視界はとてつもなく悪い。
 「どこが陸地でどこが森なんか、まったくわからへん。」
 「川や海があるかもしれんしな。木々が無い事だって考えられる。」
ロックが返す。
 「いい!このまま降りちまおう!」
コワックが提案するが、すぐにハイナが却下した。
 「ばか言わないで!」
 「ソーラ!大気の力で霧をどけられないか?」
べレンが言う。
 「待てよ。」
ソーラが試みてみると、霧が薄くなってきた。
 「その調子だ!」
大陸自体が真っ黒なので確証はないが、おそらく霧は完全に晴れたのだろう。
 「よっしゃ!俺様にかかればこんな・・・なんだこりゃ・・・」
皆があっけにとられた。地面や木々が黒いのはあらかた予想がついていたが、そこらじゅうにマトランの死体、骨、マスクが無数に転がっている。全身黒ずんでるものもあれば、まだ元の色のまま腐っているだけのものもある。べレンは茫然としたままギアと共に着陸した。
 「なんだ、こりゃ。」
 「まるで地獄や。」
足の踏み場もない、と言っても過言ではないだろう。他の4人も後に続いて着陸した。
 「これは・・・なに・・・」
ハイナが動揺を隠せない。
 「ここに訪れた者達だろうな。なんとか陸に上がったものの、船は大破し、帰る術を無くした・・・そんなとこだろう。」
コワックが冷静に言う。
 「それにしても様々な時代の亡骸が転がっているな。」
ロックの言うとおりだった。暗黒病に侵され、地面と区別ができないくらい黒く染まっているものと、まだ元の色がのこっているものとで、身につけているカバンなどの道具のデザインが違う。完全に黒く染まっているものは、おそらく大昔にここを訪れて死んでいったのだろう。
 「まだ完全に黒く染まっていないのは、最近来たって事か?」
ソーラが聞く。
 「一概にそうとは言えないが、その可能性は高い。見ろ、君の足元に転がってるまだ所々が黒くなって腐っているだけのやつ、リュックに生年月日が書いてあるが、割と最近だ。」
ロックに言われて足元のそれを見ると、確かに生年月日は約20年前だ。
 「それにしてもこの数は異常だ。中には古い型の剣を所持した集団死体もある。何か歴史に裏がありそうだぞ。」
コワックが遠くの荒野を眺めながら言う。確かにそこには古代の軍隊と思われる死体が無数に転がっていた。
 「えげつないわ。こんなとこで戦でもしようとしたんかいな。」
ギアが腕を組みながら言う。
 「さあ、みんな。バックパックを背負るんだ。知っての通り時間がない。」
べレンが促すと、ギアが阿修羅ハンド、ロックがレッパクロー、コワックが白竜ソウルを背中に転送した。
 「霧を晴らせるのはソーラだけだ。みんなで行動するぞ!」
 「せやな。」
 「俺だけが頼りってわけだ!」
ソーラの無駄口をみんな無視した。
 「暗黒草の容姿はG.R.Nから受信したわ。」
ハイナが他の5人に暗黒草の画像を送信した。
 「ほぉ・・・」
ロックはマスクの裏に映し出されたそれを眺めながら言う、
 「6本の細長い葉・・・短めの茎・・・」
 「どのくらいの量がせいそくしているのかは分からないわ。とにかくこの画像通りの草を見つけたらすぐに言うの!」
ハイナが声を荒げる。焦りを感じているのだろう。
 「よし、ソーラは定期的に霧を晴らしてくれ!俺が自分の手に火を灯しながら先導する!」
6人は闇の中を歩みだす。それは彼らの運命そのものである。



 その頃、トーア達より先に上陸していたローレライとカッチュは、黄色のマスクに黄色と黒のボディ、上半身が大柄なマトランで下半身が蜘蛛足3本、おまけに腹からクワガタのような顎が飛び出している男と対峙している。
 「俺を誰だか忘れたとは言わせねーぞ。」
カッチュが言う。
 「おんどりゃあ、その声は・・・」
男が返す。
 「俺はどんな闇も見通す。だからここまで来れたんだぜ?もう分かったろ。」
カッチュがにやつきながら言う。
 「・・・きゃきゃきゃきゃ。よぉ、久しぶりじゃあのぉ、相棒帰ってきとったんかぁ。」
男もにやつき始めた。ローレライはボーっとやり取りを眺めている。
 「元気にしてたか、クレスト。」
 「たった今元気になったわぁ。きゃきゃきゃきゃきゃきゃ!!!」
クレストが笑いながら言う。
 「ははははははははは!!!」
カッチュとクレストの不気味な笑い声が、辺りにこだました。



第10話 完
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by maxhorn | 2013-03-26 22:38 | 旧ストーリー

第9話

 一つ目で銀色の体のその女が発する衝撃波は、辺りの砂や草木を吹き飛ばし、3人のトーアを翻弄していた。
 「くそっ!近づけねえぞ!」
ソーラが接近を試みるが、あえなく跳ね返された。
 「いいわ。2人は奴の気をそらして!」
ハイナが指示を出す。
 「気をそらせ!?どーやって!」
ベレンが反応する。
 「自分で考えなさいよ!」
そう言ってる間に3人共、謎の女が放つ衝撃波に吹き飛ばされた。だがハイナは砂埃が舞ってる間に隙をみて海に飛び込んだ。
 「何も見えねぇ!」
ソーラが砂埃を掃いながら言う。ベレンは目を細くして辺りに注意を払う。
 「見えた!」
ベレンの叫びに対して
 「何ぃ⁉」
とソーラ。
 「女と目が合ってる!今だ!」
ベレンはバックパックのフレイムジェットを起動して、銀の女目掛けて飛んでいった。女は不意を突かれ、ベレンの拳が自分の顔面にぶつかるのを感じ、その衝撃で倒れた。
 「捕まえたぞ!」
ベレンは女に馬乗りになり、首を押さえている。遅れをとったソーラは、その様子を傍観していた。
 「あの砂埃の中、よく見切れたな…。」
そこでソーラはある事に気付く。
  「ハイナは⁉」



 ハイナは海に潜っていた。水のトーアだ、当たり前かもしれないが、水中で息はかなり長く続く。始めは銀の女の背後に回ろうとしたのだった。なのになぜ、見知らぬ小型潜水艦に、マニピュレーターで捕獲されているのだろう、とハイナは不思議に思った。よく見ると潜水艦のコクピットには、一昨日要塞監獄から逃げ出した囚人がいる。
「何が目的なの!」
マトランに問いかける。聞こえているのかどうかは分からないが。
「妙に眩い光が見えたと思ってここまで来てみたら、まさか3代目トーアをお目にかかるとはな。」
カッチュはハイナをこのまま締め上げて艦内に監禁し、任務完了後に主に手土産でもと思っていた。しかし、そう簡単にはいかなそうだ。
「水の気を操る事くらい!」
ハイナは両手を目の前に添え、渦巻を発生させた。
「ぬわっ」
渦巻は潜水艦のコクピットの大きなガラスにぶち当たり、ヒビを入れた。
「やった!」
「おのれっ!」
カッチュはハイナを振り回したのち、遠くに投げ飛ばした。しかしハイナは動じる事なくそれに対処する。
「はっ!」
海中に壁が存在するかのように水を蹴り、潜水艦に接近し、再び渦巻を潜水艦にぶつける。今度のは特大だ。
「まずい!」
遂にコクピットのガラスが割れ、海水が侵入してきたのを機に、その割れ目からカッチュは自ら水中に飛び出し、もの凄い速さで身をくらます。
「どこ⁉」
ハイナは仄暗い海中を見回すが、どこにもカッチュの姿は無い。
「やあお姉さん。」
突然背後からブレードが現れ、ハイナの喉元に突き付けられる。
「いつの間に!」
ハイナはカッチュに捕らえられたまま、海面へと誘われた。



 砂浜ではベレンと銀の女が取っ組みあっていた。相変わらずベレンは相手の首を締めている。
 「どうにかせな!」
ギアが声を上げる。ギア、ロック、コワックもやっと合流したらしい。3人共ボロボロだ。
 「今手を出せばベレンも巻き添えになる。」
ロックが冷静に返す。
 「どうにかして女を後ろから押さえるしかないわ!」
ギアが介入しようとしたその時、カッチュとハイナが水中から上がってきた。カッチュは声を上げて笑った。
 「はははは!そうか、6人揃っていたか!」
そしてハイナが叫ぶ。
 「助けて!」
ソーラはすぐに反応し、バックパックの左右にに取り付けられているマシンガンで、カッチュを狙い撃ちした。しかしカッチュはハイナを放してそれをよけ、再び水中に潜った。
 「よけやがった!」
ソーラが叫ぶと
 「危ないわよ!」
とハイナ。
 「どこ行きやがった!」
ベレンと銀の女をよそに、他のトーアはカッチュを目で探す。
 「未熟すぎる!」
カッチュは突然海から飛び出し、ソーラの顔を蹴り、ベレンと銀の女目掛けて走る。
 「させへんで!」
ギアが大地のパワーで陸を振動させたが、カッチュはやすやすとそれをやり過ごし、ロックとコワックの間を抜けて、ベレンと銀の女に突進する。
 「!」
ベレンは接近してくるカッチュの方に顔を向ける。その隙を銀の女は見逃さなかった。
 「何!」
ベレンはまたも銀の女に波動攻撃で飛ばされた。たがそのおかげで、ベレンはカッチュをよける事ができた。
 「ちっ。」
カッチュは態勢を立て直そうとした。その時、銀の女の姿を見て、またも声を上げて笑う。
 「はははは!主がおっしゃった物にまでここで会うとはな!」
6人のトーアも態勢を立て直しながら、その様子をうかがう。
 「もしやカッチュ卿か?」
初めて銀の女が声を発した。誰も聞いた事がないような、透き通った声だった。
 「その声、まさしく本物だ。そしてその通り、俺がカッチュ卿だ!」
声を高らかに、6人のトーアに向けて言っているようにも聞こえる。
 「手間が省けた。」
銀の女はそう言うと、バックパックを出現させた。銀の翼付きのジェットパックだ。
 「捕まりなさい。」
銀の女はカッチュの手を握った。そこでベレンが叫ぶ。
 「待て!お前、そこの女、名前を言え!」
銀の女がベレンを振り返る。
 「相手にするな、任務がある。」
カッチュの言葉を無視し、銀の女は声を発した。
 「ローレライだ。そう呼びなさい。」
カッチュはフンと鼻を鳴らした。
 「ローレライ、逃がさないぞ。俺達が必ずお前らを捕まえる!」
ベレンが睨みをきかせながら叫ぶ。それに同調し5人のトーアも睨みつけている。
 「我々はこれから暗黒大陸へと向かう。"死が生きる場所"だ。そなた達はどうする?」
心なしか、ローレライが、笑みを浮かべた気がする。
 「ちょうど良い、俺達もそこに用がある!」
カッチュが声を上げて笑い、ローレライは上空に顔を向け、ジェットパックを噴射させた。一瞬で空高く舞い上がり、無人島を後にした。
 「俺達も行くぞ!」
ベレンが声を上げる。
 「あかん、フェリーで借りたモーターボートは大破しとる!」
ギアが言う。
 「暗黒大陸はすぐそこだ!飛べる奴が3人を抱えてペアになって行く!」
全員が同意し、ベレンとギア、ソーラとコワック、ハイナとロックのペアに分かれて飛んだ。



 「いい?ファグラッチェの国王は、残り5日で死ぬわ!私達も大陸に着いた瞬間から7日目がタイムリミットよ!」
飛行中、ハイナが言う。
 「わかってるさ!暗黒草を手に入れ、国王を救う!そして奴らを倒す!」
ベレンが言い張る。
 「それも良いがな、リーダー殿。国王が暗黒病に感染した経緯も探らなきゃならねぇ。」
コワックが言う。
 「やる事ありすぎやねん!」
とギア。
 「これもトーアの運命だ。」
ロックが言った言葉で全員が改めて実感した。自分はトーアなのだと。



第9話 完
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by maxhorn | 2013-03-02 00:49 | 旧ストーリー

第8話

 べレンが速度を落とし始めたので2人もそれに続いた。無人島が見えたらしい。すぐそば、ざっと5キロ程離れた場所に漆黒の霧が漂う巨大な大陸が見えた。暗黒大陸だ。ソーラは大陸に目を奪われ、加えて日暮れで前が見えにくく、ハイナに声をかけらればければ無人島の砂浜に頭から突っ込むところだった。
 「よそ見しないで!!」
着陸と同時にハイナに怒鳴られた。言い返しそうになったが翼が砂で汚れているのに気が付き、それをはらう事を優先した。
 「おい、ロック聞こえるか?」
べレンはすかさず通信を試みる。
 「…レン、べレン…!!」
ノイズ混じりに聴こえた。
 「ロックどこにいるんだ!!」
べレンが言う。
 「まず…ぃ、!…!奴が…!!」
次の瞬間、無人島のどこかから爆発音と真っ赤な煙が立ち上り、夕闇を照らす。
 「ロック!!」
通信は途絶え、あとにノイズが悲しく響く。
 「大変、べレン、ここは『暗黒海』よ!!」
 「そんな事はわかっている!!だからなんだ!!そんな事より早く煙の上った場所へ…」
べレンはハッと気付いた。暗黒海…、暗黒大陸付近の海。そこは夜になると海面数十メートルを文字通り暗黒で覆い尽くしてしまう。その闇には月の光さえ通用しない。
 「まずい…。」
気付いた時には遅かった。周囲は闇で包まれ、立ち上っていたはずの真っ赤な煙は黒く塗りつぶされていた。風の音、波の音、3人の足音と声以外何も聴こえない。
 「2人共動くな!!落ち着け!!」
べレンが少し焦り気味に言ったので、ソーラがカッとなった。
 「あんたがまず落ち着けよ、リーダーさん!!」
 「何ぃ!?」
 「馬鹿ね!!この暗闇の中喧嘩してどうするの!?」
ハイナの渇が入り、2人は黙った。
 「良い?ここは私の意見を聞いて。まずべレン、駄目かもしれないけど、とりあえず発火してみて。」
 「お…おぅ。」
当然の如く出来ると思った。しかし出来ない、発火出来ない。トーアの体になれば簡単に出来ると勘違いしていた。しかしいくら体に力を入れても、この闇を切り裂く炎どころか、音さえ聴こえない。
 「畜生!!何でだ!?」
 「言うだけ無駄だったみたいね。ソーラあなたは何か出来る?」
ソーラが答えない。
 「…?ちょっと?」
 「あ、あぁ、いや何も出来ない。」
どうやらNOのつもりで首を横に振っていたらしいが、ここは暗黒。見えるはずがない。
 「通信してみる。」
べレンが通信を試みた。ロック、コワック2人には通じなかったがギアが返事をした。
 「べレン!!」
 「ギア!!今の状況は!?一体何と戦ってるんだ!!」
 「あかん、奴はばけもんや!!コワックとロックは爆発に巻き込まれてしもて、敵とサシになった瞬間まっくらや!!敵の動く気配も無いし、朝までまつしか無いかもしれへん。とりあえず2人を探し出しておくわ!!」
 「わかった!!」
通信を終えた。
 「ギアは無事だ。とりあえず夜明けを待つ。何も見えないが砂浜である事は間違いないから、ここで横になろう。体を休めるんだ。1日中飛び回ったし、時差で疲れた…。」
 「そう言えばここ、本堂のあるニークルとは約12時間も時差が…。」
3人はバックパックを本本堂の格納庫に転送し、就寝した。



 ラグナロクの森を抜けた。なんて清々しい朝だろう。
 「で?どうするんだねアーブ君。」
 「トーア聖堂に行きます。あそこにはツラガもいるし、警備も整ってる。安全ですよ。
 「なるほどな。なにで行くんだ?」
 「歩きです。」
 「…。」



 暗黒海が闇に包まれてしまったので、潜水艦を一時停止させ、体を休めた。しかし本当に真っ暗だな。俺の目は闇をも見通すが、実際この深さじゃ生き物など存在しない。朝になれば行動しやすくなる。それまで作戦をさらっておくか…。
 「コンピュータ、ファイルを開いてくれ。」
カッチュは潜水艦のコンピュータに命令し、作戦の内容を確かめるのだった。



 嫌な予感がして起きてしまった。辺りはまだ闇に包まれている。健やかな風が体に触れ、波と2人の寝息がひと時の平和を象徴していた。
 「…。」
さっきギア達が戦っていた謎の敵の正体はなんだろう?2代目世界トーアの死に関係するのだろうか?こんな調子でファグラッチェの国王を救えるのか?いろいろ考えていると、突然、眩い光が…。
 「朝か!?」
べレンは立ち上がり空を見上げた。太陽…を背に何かがこちらを見ている。綺麗に直立状態で落下しながら。
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 「なんだアレは!!」
ソーラだ。ハイナも起きていた。
 「うわっ。」
空気が急に重くなった様に感じた。そして3人は重みに耐えられず倒れた。 
 「超音波か!?波動か!?」
べレンは起き上がり、バックパックを起動させ、飛び立った。
 「お前は誰だ!!」
落下する謎の人物に突進しようとしたが、またもや波動か何かで跳ね返され、砂浜に墜落した。
 「ばか!!」
ハイナが歩み寄り、べレンを起こした。その時、どすんという音と共に、謎の人物が砂浜に降り立った。砂埃で良く見えない。
 「お前は誰だ!!」
べレンが叫ぶと、その者の1つしかない目がキラリと光った様に見えた。


第8話 完
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by maxhorn | 2010-04-03 23:16 | 旧ストーリー

第7話

 「トーアさん!!」
怒鳴り声と同時に体に電気が走ったかの様な感じがした。
 「畜生どうなってやがる!!」
べレンは驚いてバランスを崩し、空中から落下した。
 「べレン!!」
 「おいっ」
ハイナとソーラが同時にべレンの体を空中で抱きかかえた。
 「どうしたのよ!?」
べレンは何が何だか分からない様子だ。
 「トーアべレンさん!!聞こえますかー!?」
 「わっ!!」
べレンは体をビクっとさせて辺りを見回した。
 「何なんだ!?」
 「え?」
ハイナが聞き返した。
 「お前ら聞こえないのか?声が!!」
 「声?」
ソーラが眉間にしわを寄せた。
 「きっとあれよ、G.R.Nからの通信よ!!」
ハイナが言う。
 「通信?」
べレンが聞き返す。 
 「そうよ。言ってたでしょう?ツラガが。”トーアには特別なオーラが出ている。トーアによってそのオーラの濃度や質は違う。そして特定のオーラと一致する波動を使って、そのオーラが出ているトーアに生身のまま通信が可能だ”って。さっきツラガに通信した時も私はそうしましたっ。」
一瞬間が空いて、べレンが口を開いた。
 「じゃあG.R.Nのスタッフが俺に通信を?」
 「そうですよ。」
1人のG.R.N通信担当スタッフが話した。
 「口に出して話して。通信出来るわ。」
ハイナがアドバイスした。べレンは咳払いをして試みた。
 「ぁぁ…あ…トーアべレンだ。」
歪だ。
 「やっと応答してくれた。」
 「すまん、何が何だか。」
 「僕はG.R.N通信係です。ツラガからお聞きしました。暗黒大陸へ?」
 「あぁ。そうだ?」
 「6人全員が暗黒病に感染したらどうするおつもりで!?みんなで死にかけてしまったら誰がその暗黒草を採取するんですか!!」
怒鳴られたのでイラッときたべレンは怒鳴り返した。
 「ファグラッチェの王の場合、元々年寄りで、衰弱していた体だったんだ!!だから感染した死にかけてる!!だが俺達は健康、もといトーアだぞ!?感染してすぐには死にかけたりしない!!」
あまりに大きな声を出すものだから、べレンが発する見えないトーア独特のオーラが、一瞬真っ赤な炎となって具現化した気がした。
 「な…、どうしようもない推測で…」
 「うるさい!!俺達のやり方に口を出すな!!通信終わり!!」
べレンがそう言うと、向こうの声が聞こえなくなった。どうやら通信を遮断出来たらしい。
 「あーぁ、G.R.Nと気まずくなったぜ。」
ソーラが呆れ返るように言う。
 「次会ったら謝るのね。」
ハイナも同じく。
 「任務があるんだ。急ぐぞ!!」
一定の高度を保っていたべレンが暗黒大陸に向かい出したので、ハイナとソーラもそれにならった。



 「申し訳ありません。ご主人様。」
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ラグナロクの森でレラ坊達を襲った男が主人の前に跪く。
 「仕方あるまい。奴は武に優れておる。カッチュ卿を監獄から救い出す手助けをしてくれた事もある故、今回だけは見逃してやる。」
 「ありがたきお言葉。」
男は深々と頭を下げた。



 「ここはまずいぞべレン!!」
また通信がきた。
 「今度はロックだ!!」
上空を飛行していた3人はまた一定の高度に静止した。
 「今正体不明のものと交戦中だ!!大陸に一番近い無人島でだ!!早く来てくれ!!」
 「わかった!!今すぐ行く、待ってろ!!」
通信を切り、2人に状況を説明した。
 「大陸には6人で行くべきよ。」
ハイナが言う。
 「俺について来い!!」
べレンは急降下し出した。ハイナも続く。
 「あぁ…くそっ。」
ソーラも渋々それに続いた。


第7話 完
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by maxhorn | 2010-03-25 22:05 | 旧ストーリー

第6話

 暗黒大陸…そこに住む生き物の細胞は暗黒病ウイルスそのものである。ウイルスが大陸以外の生き物に空気感染すると、きっかり1週間で死に至るという。故に大陸に足を踏み入れた者は決して生きては帰れない…そう歴史には記されている。しかし暗黒草を用いた薬を施すと、みるみるウイルスは死滅し、死を免れる…これが本当なら誰かが大陸から生還しているのだ。

 上空をマッハで飛行し大陸に向かうべレン、ハイナ、ソーラ。モーターボートで大陸に向かうロック、ギア、コワック。暗黒草の存在と効き目を信じ、それを採取に向かうのだ。おそらく自分達も感染する。だが余分にそれを採取し持ち帰れば、ファグラッチェ国の王を救った後、自分達の死を回避出来る。ツラガにもそれを知らせ、1週間他の任務は断る事にした。どの道タイムリミットは1週間なのだ。
 「暗黒草は存在するわ。そんな気がする。」
ハイナが言う。
 「わずかな可能性だが、賭けるしかねぇな。」
ソーラが答えた。
 「大丈夫さ…。大丈夫なんだ。」
べレンはそう自分に言い聞かせた。そうであってくれと、神に懇願していた。



 「コイツっ」
不気味なマスクを被った長身の男、よもやトーア並みの体格の男。鋭いブーメラン状の武器を両手で2つ持ち、振り回してくる。アーブはそれをかわしつつ、隙を見てブラスターを発砲する。だが男は武器で跳ね返す。1度命中したようにも見えたが、見間違いだろうか。
 「レラ坊さん危ない!!」
男が隙を見て片方のブーメランをレラ坊向けて投げた。まずい、任務失敗!?
 「ふんっ」
なんとレラ坊はブーメランをかわした!!腰を後ろに曲げ、海老反りになって。
 「何だと!?」
男が無意識に叫んだ。てっきり暗殺成功かと…。
 「っ!?」
突然激痛が走った。胸か、頭か、首か?とにかく小賢しいボディガードに撃たれたらしい。男はその場にバタリと倒れた。レラ坊はアーブに近寄り、渇を入れた。
 「とんだボディガードだな。」
 「すみません。しかしすごい身体能力ですね。」
 「私を誰だと思っている。ラクシだぞ?」
確かに…納得だ。
 「さて早くここを…危ない!!」
レラ坊はアーブの頭すれすれに長い脚で蹴りを入れた。
 「わっ」
男が生きている。なぜだ?ブラスターの弾は心臓を貫いたはずだ。
 「貴様不死身か!!」
レラ坊はラクシが常備する2本のナイフををいつのまにか握っていた。
 「逃がさん!!」
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男はレラ坊に武器を振り下ろしたが、即座にレラ坊はブロック。そしてアーブが再びブラスターで狙い撃ちをした。
 「ぐをっ」
今だ!!レラ坊は男の首をはねた。
 「コイツには再生する時間が必要らしい!!逃げるぞ!!」
 「はい!!」
2人は今にも起き上がりそうな暗殺者を放置し、森を抜けるため、廃墟となった謎の施設を通過した。



 カッチュは小型ステルス潜水艇で、暗黒大陸に向かっている。かつての仲間の1人が住みついていそうな場所。ここしかない。暗黒草も、採取しなくては…。


第6話 完
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by maxhorn | 2010-03-21 22:04 | 旧ストーリー

第5.5話


 「良いな?まずはこの2人を探し出せ。」
主の声は部屋の中に響き、下部はいつものように跪いた。
 「お前のシックスセンスをもってすれば、かつての仲間の居所を掴むのは容易いはず。頼んだぞ。」
 「おおせのままに…。」
カッチュは暗い部屋の中で難なく出口扉のドアノブを手にした。だがカッチュは少し躊躇しながらも主に向き直った。
 「なんだね?カッチュ卿?」
カッチュは主の目を見た。
 「例の計画は…成功…その…見つけ出したのですか?」
カッチュは主の反応を見ながら話した。主はニコリと笑みを浮かべた。
 「案ずる無かれ。『ローレライ計画』…順調だ。既にテスト段階に突入しておる。」
 「見つけ出したのですか!?…その…女を。」
主はますます笑みを浮かべ出した。
 「ただの女ではない…『ローレライ』。魔女だよ。 カッチュ卿、何か不満なのか?」
カッチュは一歩退き答える。
 「い…いえっ、まさかそんな!!」
 「ふふふ…なら良いのだ。もう何も話すことは無い。下がれ。」
カッチュはドアノブを捻り、部屋を後にした。
 
第5.5話 完
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by maxhorn | 2009-12-28 11:12 | 旧ストーリー

第5話


 「話は分かった。」
ニークル世界議会、大気の国代表のレラ坊議員は、突然目の前に現れたマトランと話をつけた。
 「では僕について来て下さい。」
まさか私がテロリストに狙われるとは…。まぁ無理も無い。私はミュートランを保護する事に根っから反対だ。すなわちミュートラン達全員を敵にまわしているのだ。おそらく必然であろう。
 「アーブ君、私をどこに連れて行く気なのだ?」
 「アーブ君だなんて。アーブで良いですよ。」
 「あ…あぁ。」
このマトラン、本当に大丈夫なのだろうか?こいつ自身がテロリストで、私をこのままアジトに連れて行く気では?
 「な…なぁ、アーブ。君が誰に仕えているのか、なぜ教えてくれないんだ?」
恐る恐る聞いてみた。
 「今ここでは言えません。敵に盗聴されている可能性があります。」
アーブはマントを翻し、ブラスターガンを構えた。
 「では参りましょう。」
マネージャーを置いて、私はアーブについて行った。世界議事堂の正門を抜け、そのまま森へ続く道へと歩を進めた。
 「なぁ、どこに行くつもりなんだ!?」
 「とにかくついて来て下さい。何も話しかけないで!!」
森に入ったらしい。木々が私達を囲んでいる。後ろを振り向くと、まだ世界議事堂を見ることが出来た。
 「よそ見しないで。」
まったく注文の多いボディガードマンだ。
 「ここから森の最深部です。良いですか、この森は野生のラヒが凶暴なだけでなく、山賊が度々現れるのでも有名です。僕のそばを離れないで。」
なんてこった!!気付かなかったとは不覚だった!!この森、世界で一番危険な森、『ラグナロクの森』じゃないかっ!!
 「ラグナロクの森なのか!?」
 「話しかけないで!!」
くそーっ。自分から話し掛けてきたくせに。それにしても歩くのが速い。
 「もー少しゆっくり…」
その時、アオーゥッという遠吠えが聞こえた。
 「近い…。」
どーなるんだ!?



 「父上。」
ファグラッチェ第1皇子と共にファグラッチェ城の王の間に、足を踏み入れた、べレン、ハイナ、ソーラ。部屋の奥には国全体を見渡せそうな大きな窓があり、その手前に薄ピンクのカーテンがかけられた屋根付きベッドがある。そのベッドには長い髭を伸ばしたマトランが寝ていた。ファグラッチェの国王だろう。確かに死にかけていた。マスクの縁は錆びつき、既に虫の息だ。
 「聞こえますか、父上?フーギです。」
第1皇子フーギは繰り返し呼び続けた。
 「父上、兄が来ていますよ。」
べレン達より先に部屋に入っていた第2皇子も呼びかけた。
 「…お…おぉ…フーギよ…ちこぉ(近くに)寄れ。」
国王が目を見開いた。見えているのかは定かではないが。
 「あまり無理をさせないよう…」
近くにいた専属医師が口を開いたが気まずそうだ。
 「黙れ!!この役立たずが!!」
第2皇子が大声をたてた。するとフーギが第2皇子を睨みつけた。
 「父上のお体に触るだろう、ホギー。」
 「すみません。」
ホギーはしゅんとしている。
 「父上、フーギはここでございます。」
 「フーギよ…わしもそう永くは無い…。」
 「何を弱気な。父上、父上は病気なのです。すぐに彼らが父上を治してくれます。」
何ぃ!?俺達はトーアであって医者じゃない!!ハイナもソーラも呆然としていた。
 「お…おぉ!!トーアじゃ!!勇者がわしを助けてくれる!!」
 「えぇ、そうですとも。」
べレンは、俺らは医者じゃない!!と叫ぼうとしたがその前にハイナが動いた。
 「お医者様。陛下は何の病気なのですか?」
医者は躊躇したが、皇子達が医者の意見を聞こうとしていたのでやむなく応えた。
 「はい実は、『暗黒病』と言いまして…。現在の医学では不治の病とされておりますですはい。」
その言葉を聞いた瞬間ホギーが倒れた。即座に側近達がホギーを囲み、他の部屋に移した。フーギはそんな事に気付いてもいないようだ。放心状態とはこの事だろう。涙を浮かべている。
 「ふ…不治の病とな?」
国王が口を開いた。
 「暗黒病…?」
聞いたことがある。暗黒病は、『暗黒大陸』で発見されたラヒから采取されたウイルスの事だ。だが治す方法はある。暗黒大陸に生えている『暗黒草』を使って専用の薬を作るのだ。
 「暗黒病を…治すには…暗黒草がいる。」
そう言って国王は目を瞑った。医者が即座に脈を調べた。まだ生きているようだ。
 「陛下の言うとおり。」
べレンが呟いた。ソーラがべレンを見た。フーギもだ。
 「暗黒大陸に行き、暗黒草を手に入れる必要がある。火の国の公文書館で知った。」
一瞬間が開く。
 「ではすぐに言ってくれ。頼む。」
フーギが懇願してきた。あまりにも深く頭を下げるものだから、別の側近が慌てて近づき、頭を上げるよう促した。
 「触るな!!」
フーギはその手を振り払い、土下座した。
 「ファグラッチェ国第1皇子として、勇者トーア殿にお頼み申す!!父上を助けてください!!」
すすり泣きが聞き苦しい。だがこれこそトーアの偉大さを示すであろう。一国の皇子に土下座され、懇願されようとは。
 「頭を上げるんだ。あなたが泣いて良いのは国王陛下、あなたの父親の命が保障されてからだ。」
フーギは顔を上げ、べレンの顔を見た。
 「これから我々は暗黒大陸に向かいます。」
ハイナとソーラが顔を見合わせた。
 「ありがとうございます!!」
フーギは土下座をし続けた。3人は泣き続ける第1皇子に別れを告げ、樫の扉で出来た門を潜り、外に出た。
 「どうするつもりだ火のトーア!!暗黒大陸!?ふざけんな!!どーやって行くんだ!!」
ソーラがべレンに問いかけた。
 「行くしかないんだ。」
ソーラは悪態をついた。
 「行く事はできるわ。あたしだって暗黒病の事は知ってますっ。他にもたくさんの科学者や医師団がそれを知って暗黒大陸を訪れたでしょうよ。けどねべレン、考えた事ある?なぜ暗黒病が不治の病と言われてきたか。それはね、暗黒大陸を訪れて生きて帰った者は1人としていなかったのよ。だから暗黒草が他の大陸に来た事は1度も無いわ。3人じゃ危険よ。」
長々と喋りやがって。
 「暗黒草が他の大陸に来たことがないならなぜ暗黒病に暗黒草が効くとわかるんだ?ん?誰かがそれを試したからだろうが!!」
 「確かに…。」
なんとソーラが同意した!!
 「…それは分かったわ。けどね、3人じゃ危険よ。ロック達を待ちましょう。他にも援軍を…」
 「そんな時間はない!!事は一刻を争うんだ!!それにトーアにの初任務、6人だけで遂行したいじゃねぇか!!」
ハイナとソーラは笑みをこぼした。
 「そうね…そうかもね!!」
 「熱血め。」
 「あたしがロック達に知らせる。」



 「うむ了解した。」
ロックがコワックとギアにも詳しく伝えた。
 「事は…おうぇっ。一刻を争うな…。よしついて来いうぇっ…。」
 「大丈夫かいな。」
コワックはまだ酔いが醒めないらしい。
 「どこに行くつもりだ。」
ロックが聞いた。
 「フェリーの格納庫に行き、モーターボートを使おうぇ…。それで大陸まで行く。」
コワックが説明した。
 「一番早い方法はそれだな。」
ロック、ギア、コワックの3人は、フェリーの格納庫へ向かった。



 ラグナロクの森。アーブとレラ坊は既に最も深い場所へ来ていた。
 「レラ坊さん大丈夫ですか?」
大丈夫なもんか。さっき凶暴な4速歩行のラヒに襲われて怪我をした。
 「すみません、荒いやり方しか出来なくて。」
 「あぁ。」
だがアーブは強かった。頼りにはなる。
 「そこの者、止まれ。」
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男が立っていた。
 「何者!?」
アーブがブラスターで狙った。
 「この森を抜けるにはこの施設を通らねばならない。」
男の後ろには寂れた古い施設があった。何の施設かは分からないが。
 「ではそこを通していただこう。」
アーブが強気で言った。
 「通行料を払っていただかなくては。」
 「通行料?」
レラ坊が口を開いた。
 「えぇ。」
 「おいくらです?」
アーブは呆れ顔だ。
 「レラ坊さん下がって。」
 「え?」
男が飛び掛ってきた。
 「通行料は、貴様の命だ!!」


第5話 完
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by maxhorn | 2009-12-26 21:28 | 旧ストーリー

第4話


 「国王が死にかけてる!?」
遥か上空をマッハ0.3~0.5で飛行し、顔全体に風を浴びながら、べレンはバックパックのフレイムジェットの轟音に負けないよう大きな声で話した。
 「えぇ!!今入った情報よ!!」
ハイナは超小型携帯コンピュータ『SPC』をベルトの後ろに取り付けたケースにしまった。
 「本堂のG.R.N管理室から緊急で入ったの。」
 「確かにツラガはどんな任務か言わなかったからな。」
べレンは下の景色を確かめながら言った。
 「まさか死にかけた国王を助けろって事か?」
 「どうかしらね。見て、もうすぐファグラッチェ本土よ。」
下に広がるのは広大な草原と大きな湖だった。この高度だと、ファグラッチェの端から端まで見渡せているのではないだろうか。少し向こうに尖った城の先端が何本も見えた。おそらくファグラッチェの国王が住む城だろう。
 「ここが私達の初任務の舞台よ!!」
ハイナは心躍らせている様子だ。しかしべレンは素直に喜べない。初めての任務だというのに仲間の1人との喧嘩が続いている。ソーラは2人と距離を置いて飛行していた。勤務初日だと言うのにチームから孤立していた。リーダーとして声をかけるべきか?などと考えていたらいつの間にかファグラッチェの国王が住む城に着いてしまった。
 「門前に国王の息子ら、第1皇子、第2皇子が出向いてるわ。」
ハイナが城の門の前に降下しながらあごでしゃくった。そこには顔から下を真っ赤なマントでまとった皇子と衛兵らが数名べレン達を眺めていた。3人がそこに降り立つと、すぐさま衛兵がX線レーダーで3人が危険物を所持していないかなどを確認しだした。
 「俺達はトーアだっ。」
べレンが呆れ顔で言った。
 「トーアだろうと何だろうと規則は規則ですので。ハイ、終わりましたよ。」
べレンは不愉快そうだ。ソーラは黙って確認を受けていた。すかしやがって…。
 「殿下、彼らが3代目トーアかと…。」
衛兵のリーダーと思われる男が皇子らの前に跪いて伝えた。片方の皇子がもう1人に何かを話している。すると1人が巨大な樫の扉の横にある普通の扉を通って中に入った。もう1人の皇子はべレン達に近づいてきた。
 「待ちわびておりましたぞトーア殿。」
ハイナが腰から上を曲げて深々とお辞儀をしていたので、べレンとソーラは急いでそれを真似た。
 「私は3代目世界トーア、ハイナと申します。」
 「同じくべレン。」
 「ソーラです。」
 「我はファグラッチェ第1皇子『フーギ』なり。そなた達を呼んだ理由、既に存じ上げているであろうな?」
 「はい、殿下。存じ上げております。殿下のお父上、国王様が…」
 「ここでその話をするでないっ。民が聞いていたらどうする!!」
なんと。国民は自分達の国の王が死に掛けている事実を知らされていないのだ…。
 「取りあえず中へ。」
皇子の合図で巨大な樫の扉が左右に開いた。3人ともバックパックを聖堂の格納庫に転送し、トーアサイズに造られたのだろうかと思うほど大きなピロティを横切り、一番目立つ一番大きな扉を通り、螺旋階段を上った。
 「今時横開きの扉さ。なんでも歴代の国王が代々住み続けているそうで、1度も建て直された事がないそうだ。」
ソーラは皇子に聞こえないように鼻を鳴らした。
 「皇子、」
 「詳しい話は後で。まずは国王陛下の容態を診てやってくれ。」
 「わかりました。」
ハイナは皇子のすぐ後ろからついて行った。その後ろからべレンとソーラが何も口を利かずについて行く。
 「ところでハイナ君、3代目のリーダーはそなたなのかな?」
ハイナは気まずそうな顔をした。
 「私がリーダーです、殿下。」
べレンが声を上げた。ソーラが眉間にシワを寄せた。皇子は立ち止まり、べレンの足の先から頭のてっぺんまでをまじまじと眺めた。そしてフンッと鼻息を鳴らし、国王の寝室への歩を進めた。べレンが何か言おうとしたが、ハイナによって制された。
 「駄目よ。」
しばらく歩くと真っ赤な扉の前で皇子が立ち止まった。扉の真上の部分にはファグラッチェ国の紋章(赤い果物らしきもの)が描かれていた。
 「ここが陛下の寝室だ。」
皇子が真っ赤な扉をそっと開いた。
 「父上…」



 「おうぇぇぇぇぇ」
 「トーアが聞いて呆れるわ。」
フェリーの手すりにもたれて海に向かって嘔吐するコワックの背中をさすりながら、ギアが言った。
 「おい、いい加減にしろコワック。」
ロックはコワックを急かした。他の乗客達が3人のトーアを囲んでいるのだ。
 「見てー母ちゃん!!おっきぃ人らよー」
小さい子達が集まってきた。
 「トーアさんだわ!!皆バッグにサインしてもらいなさい!!」
10人くらいの子供が一気に飛びかかってきて、バッグを差し出してきた。
 「ちょ…ちょ痛っ。」
珍しくロックが戸惑っていたので、ギアは笑ってしまった。
 「ぅおうぇぇぇぇぇぇぇ!!」
コワックは船酔いが激しいらしい。
 「先が思いやられる…。」



 主に預けていた私物を返してもらった。色々物色している内に、懐かしい物を見つけた。電子アルバムだ。ホログラムではなく、2次元の旧型のだ。
 「忌まわしき過去だな…。」
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第4話 完
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by maxhorn | 2009-12-18 17:01 | 旧ストーリー

第3話


 トーア戦争当時、1000人あまりものトーアが存在した。そしてそのトーア達の中には、トーアの体質を知らずに、マトランと配偶する者達がいたのだ。彼らの間に生まれる新たなる生命は、何の異常も無いマトランに成長する。だが、その遺伝子は子孫の代で覚醒した。覚醒したマトランの内のほとんどは奇形であったりという、何らかの障害を持って生まれ、すぐに死んでしまう者もいた。しかし残りの者は、超人的な能力と完璧にリンクしたまま成長するのだ。覚醒したマトランを人は『ミュータントマトラン』すなわち『ミュートラン』と呼んだ…。

 死なずに成長し続ける障害を持つミュートランは、他のマトラン達に懸念されて来た。差別と言っても良いかもしれない。そのいわゆる人種差別に耐えながらも、そのミュートラン達は行き続けた。だが超人的な肉体、パワーを持つミュートランは、その国の軍や政府に仕えることが出来た。現在生存しているミュートランは1000名以上。内数名は身体がパワーを受け入られた幸運なミュートランだ。

 俺は幸運なミュートラン。今もなお苦しみ続ける哀れなミュートラン達を救うため、組織に入った。神から授かったこの身体、弱き兄弟達の為に利用するまでだ。俺は今、主のもとへ向かう…。



 「よくぞ戻った、カッチュ卿よ。」
男の声は歓喜に満ちていた。
 「わたくしはあなた様の僕にございますゆえ、当然の事をしたまででございます。」
カッチュは男の前に跪いた。
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 「しかしお前には悪い事をした。監獄送りになったのは私のせいだ。すまなかったな。」
男は哀れむようにそう言ったが、顔はにやけていた。
 「わたくしは閣下の僕、あんなものは苦ではございません。」
 「そうであろう。お前は組織結成時から私の右腕であったのだからな。だがこうして再会できた。この腐った世界から腐った者達を一掃したく思う。再び組織に力を貸してくれ。」
 「なんなりと…。」



 トーア寺院本堂のいつもの場所に集まった。ジョギング後なのに今朝は冷え込む。俺が火のトーアだからか?まぁどうだって良い。取りあえず今朝は嘔吐する事もなかったし、気持ち良い朝だ。
 「…というわけだ。」
ツラガの話が終わった。今日のは一段と長かった。それもそうだ、今日から俺達6人は3代目世界トーアとして働く。そう考えると短いくらいだ。
 「早速じゃが諸君。今朝岩石の国の隣国、『ファグラッチェ』の政府から緊急要請があった。さっそく6人で向かうのじゃ。」
 「6人で?」
べレンが声を上げた。
 「俺達の中で素早い移動手段を持っているのは、俺とソーラとハイナだけです。」
 「そうじゃの。そう言うと思った。じゃから岩石と氷と大地のトーアは『ゼルド海峡』を渡れ。それが空を渡る次に早いでな。」
コワックとギアが反論しようとしたが、岩石のトーア、ロックがそれを制した。
 「わかりました私とこの2人は海峡を渡ります。船で。」
コワックが悪態をついた。「船酔い」という単語が聞こえたのでべレンは吹き出しそうになった。
 「政府からトーアらに寄付は何も無いと、さっき教わったばかりだろう?我々はあくまで非政府組織なのだ。」
ロックが言った。
 「せやけど…。」
ギアは不服そうだ。
 「じゃ、皆出発だ!!」
べレンが5人に言った。
 「えぇ!!」
ハイナがべレンに微笑み、ギアとロックは頷きいた。コワックはまだ悪態をつき続けていた。ソーラは黙って先に出て行ってしまった。
 「あいつまだリーダーになりそびれた事根に持ってるんや。せやけど気にしたらあかんで?」
ギアが言う。
 「わかってるさ。」
べレンはツラガと目を交してから、本堂を後にした。



 「これより、『ミュートラン保護法』に関する議会を開く事にします!!」
『ニークル世界議会』楕円形の会議テーブルには、1人の議長、14人の各国代表が集まっていた。13人は純粋なマトランだが、1匹…否、1人は違う。緑色のラクシだ。
 「大気の国代表、『レラ坊』議員。発言を許可します。」
今大気の国の議員、レラ坊が発言をしようとしている。ラクシが世界議会に…。世も末だな。僕は議会の様子をTV放映で見ている。それもその会議室の隣の部屋で。
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 「ミュートランを保護する事には何の意味合いも持ちません。既に1000人にも達している危険分子を何故保護しようとなど!!」
 「意義有り!!彼らのどこが危険だと…」
他の国の代表が立ち上がり、声を上げた。
 「口を慎みなさい、まだレラ坊議員の演説が終わっていません!!続けなさい。」
 「どうも議長。」
レラ坊は声を上げた議員を睨みながら言った。
 「彼らのどこが危険か…そう聞こえましたが?では教えて差し上げましょう。1000人全員が危険というわけではないかもしれないが、中には自分のパワーを制御できずに事故を起こしたり、周りの者に危害を加えているケースが数え切れない程あります。現に先日、あなたの国で大規模な爆発事故が起きたのではなかったかな?」
マシンガントーク…口をきくラクシ。
 「それを危険分子と呼ばずに何と呼ぶのでしょう!?」
他の議員達に語りかけた。
 「こりゃマズイな。」
僕はつい口に出してそう言っていた。何時間後かに議会は閉会。会議室から議員達が出て行く音がした。僕はすぐさま部屋を飛び出し、レラ坊をつけた。
 「いやぁ、水の国元老院、ハイナ殿が辞任してくれて良かった。彼女がいたら今日の俺の演説は論破されてただろう。」
レラ坊はマネージャーに話しながら、『ニークル世界議事堂』を後にしようとしているところだ。今しかない!!
 「あのぉ、すみません。」
レラ坊とマネージャーが振り向いた。
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 「私、今日からあなたのボディーガードを勤めさせていただく、『アーブ』と申します。」

第3話 完
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by maxhorn | 2009-12-13 20:13 | 旧ストーリー

第2話


 翌日、早朝。べレンは目が覚めた。べっとりとした寝汗をかいていたから、おそらく悪夢を見ていたに違いない。酷く気分が悪い。べレンは迷わずトイレに行き、嘔吐した。べレンは手で口を拭き、水を流した。悪夢を見たぐらいでこんな様で、トーアが勤まるのか?そのプレッシャーに押し潰されそうになりながらもべレンは本堂に向かった。途中で唯一昨日仲良くなった大地のトーア、ギアに出会った。
 「おはよう。早起きやな。」
ギアは4本の腕を伸ばしてあくびをしながら挨拶をした。
 「あぁ…おはよう。」
 「なんや。顔色悪いで。」
ギアはべレンと開いたままの本堂の入り口を通りながら言った。
 「いや、大丈夫だ。」
 「ほんならえぇねんけど…。」
2人が本堂に入ると、既に他の4人とツラガは集まっていた。
 「おせぇなぁお二人さん。」
なぜか準備体操をしているソーラがからかうように言った。ギアはソーラに笑みを浮かべたが何も言わなかった。べレンはそんな事どうでも良かった。昨日と同じように円形の機械の周りに集まり、ツラガの言葉を聞く体制に入った。
 「皆、おはよう。いよいよ明日、世界トーアとして勤めてもらうわけだが。その前に何点か説明したい事がある。」
全員が聞き入った。
 「ひとつ。このトーア聖堂本堂は、本堂兼、G.R.N(グローバルレスキューネットワーク)の中枢コンピュータでもある。つまり、世界各国の政府からいつでも要請を受ける事ができるわけじゃ。」
 「なるほど。」
ハイナが食いつくように聞いている。
 「G.R.Nの中枢コンピュータの管理人は…まぁこれはまたでよし。」
ハイナの眉間にシワが寄る。
 「続けて良いかな?ハイナ」
ツラガがハイナに問いかけるとハイナは我に返り、眉間にシワを寄せるのをやめた。一瞬、ギアがくすりと笑うのを、べレンは聞き漏らさなかった。
 「ふたつ。君らが今背負っているバックパックじゃが、各々のエレメントパワーを使い、聖堂の武器倉庫に転送することが出来る。そしてまた、武器倉庫から各々の背中に転送可能じゃ。」
 「もっと早く言ってくださいよ。寝苦しくって。」
ソーラが口を挟んだ。
 「そうじゃな大気のトーア君。ほれ、今すぐにでも倉庫に転送可能じゃ。やってみ。」
何をすれば良いのかわからないのに、いつの間にか全員のバックパックが消えていた。おそらくトーアとしての本能がそうさせたのだろう。
 「よろしい。」
ギアは腕が2本消えたためか、バランスがおかしくなり、倒れそうになった。
 「ギア、よいかな?」
 「だ…大丈夫でっせ。」
ギアはべレンに支えられて、ギリギリバランスを取り戻した。
 「ただでさえ目立つ体格なのじゃ、少しでも目立たないように、また小回りがをきかせたいときに倉庫に転送。戦闘時などには背中に背負うと良かろう。音速転送だから、各々巧みに操るよう。」
 ハイナはふかーーく頷いた。ギアは居心地悪そうだったが、他の皆は身軽になり、嬉しそうだった。
 「最後にもうひとつ。6人の中からリーダーを選出したい。初代と2代目はどちらとも火のトーアがリーダーを勤めたのじゃが。立候補はあるかな?」
大気のトーア、ソーラが手を挙げた。コイツが…、コイツがリーダー?べレンは嫌悪にも似た感情を抱いた。この目立ちたがり屋でひねくれた男が?世界の守護者のリーダーだと?こんな奴に任せるくらいなら…。
 「では、ソーラがリーd」
 「待ってくれ。」
全員が声の主を振り返った。
 「俺がリーダーだ。」
ソーラは目を丸くしてべレンを睨んだ。
 「何だとー!?」
ソーラは立ち上がり、べレンに飛び掛った。
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 「てめー火のトーアだからって出しゃばってんじゃねー!!」
ソーラはべレンを横殴りし続けた。
 「貴様みたいに責任感の無い男がなぜトーアなんかになれたんだろうな!!」
顔を両腕でガードしながらべレンが叫んだ。
 「あんた達!!」
ハイナが止めに入ろうとするのをロックが止めた。
 「何よ!?」
ロックは首を横に振りこう言った。
 「このまま成り行きを見よう。」
 「え!?」
コワックはほぼ無関心のようだ。ギアはあたふたしている。
 「決まったな。」
このツラガの言葉に、6人の動きが止まった。
 「軽率な行動、発言。実力が全てではないぞ、大気のトーア。」
ソーラは顔をワナワナ震わせている。
 「リーダーはべレンに決定じゃ。皆明日からの実戦で様々な事を学ぶのじゃな。」
ギアはべレンの上から退くよう、ソーラに促した。ソーラはべレンと睨み合っていたが、勝ち目は無いと察したらしく、べレンの上から退いた。
 「では今日のミーティングは終了じゃ。明日の朝、またここに集まるのじゃ。」



 「さっきはほんまに焦ったで。」
べレンとギアは聖堂内のモニタールームを見学しながら、さっきの出来事について語り合っていた。
 「けど良かったで、あんたがリーダーで。あんのワケ分からん気障野郎がリーダーなんかになったら、このチームはおしまいやったで。」
べレンは笑みを浮かべながら頷いた。
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その時、モニターに流れていた国際ニュース番組に速報が入った。ニークル国の要塞監獄で特別監視下に置かれていた囚人が、今さっき脱獄したのだという。
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 「事件じゃないのか!?」
そばにいた聖堂で働くマトランにべレンが問いかけた。
 「はい、その通りですが、あなた方トーアが活動を許されるのは明日からです。よってこの事件は別の者に任せなくてはいけません。」
べレンとギアはやむを得ず了解した。
 「別の者とは?」
べレンが聞く。
 「ロイ団長です。」
2人の眉間にシワが寄った。あの男の最初の印象が悪いせいだろう。
 「団長は今どこに?」
べレンが聞いた。
 「既に要塞監獄付近でその囚人を捜しています。」
べレンはギアと目配せをし、頷いた。
 「ロイ団長の幸運を祈るとしよう。」



 「隠れても無駄だ。カッチュ。お前の事だからまだ遠くには行っていないと思ったが…。まさかまだ監獄の施設内にいるとは。」
ロイは義手である右手の人差し指から光の弾を放った。
 「貴様の動きは全て把握済みだ!!」
絶え間なく放たれる光の弾を軽々と避けながらカッチュが叫ぶ。と同時に他の囚人達も騒ぎ出した。
 「警備員は皆殺しにした。この薄らボケの囚人共以外は俺達二人きりだ。今日こそケリをつけよう。」
カッチュは武器庫へ行き、剣を抜いて出てきた。その間もロイは撃ち続けたが、難なくかわされた。
 「そのシリーズの剣が相当お気に入りのようだな!!」
 「昔を思い出すだろぉ!?」
カッチュは斬りかかったが、ロイの頑丈な拳で腹を殴られ、遠くへ飛ばされ、壁に激突した。
 「ぬおわっ。」
 「体が鈍っているようだな。」
カッチュは四つんばいになり、吐血した。 
 「あばよ。」
ロイの右義手の銃口がカッチュを捕らえたが、撃とうとした瞬間には姿が無かった。
 「何!?」
 「やっと感覚が取り戻せたぜぇ。」
上から声がした。ロイが上を向くと、そこには壁にへばり付くカッチュの姿があった。
 「こんな監獄、簡単に抜け出せるんだがな。お前のせいで予定が狂っちまった。だがおかげで戦いの感覚が戻ってきたぜ!!」
ロイは問答無用とばかりに撃ち始めた。
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カッチュはそれを剣で跳ね返し、かわし、ロイは撃ち続ける。
 「らちがあかん!!」
カッチュは顔が床すれすれになるほど低い体制でロイ目掛け疾走した。その瞬間、カッチュの剣とロイの義手が激しくぶつかった。そして互いの眼を見交わした。
 「俺達のように幸運な者は良いが、」
 「?」
ロイはカッチュの意味不明な言葉に動揺した。
 「力を持っていても、身体がそれを受け付けないなんて、哀れにも程がある。そう思わないか?」
ロイはハッとした。前にも1度、聞いたことのある台詞だ。まだお互いが若いころ…。
 「油断大敵!!」
ロイはカッチュのパンチを顔面に食らった。ロイが体制を立て直した時には、カッチュの姿は無かった。
 「あの台詞…。」
ロイは昔の事を思い出していた。あの時の…台詞…。
 
 「俺達のように幸運な者は良いが、力を持っていても、身体がそれを受け付けないなんて、哀れにも程がある。そう思わないか?俺はそんな可哀想な者達を、この腐った世界から救う。弱いミュートラン達…。」

 「そう、俺達は、幸運な『ミュートラン』だ。」


第2話 完
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by maxhorn | 2009-11-15 20:45 | 旧ストーリー